クロム
人間にとって必要不可欠な元素は様々なものがあります。水素・炭素・酸素・窒素のように有機物を形成する物質と、カルシウムやマグネシウムのような金属物質が存在しますが、その必要不可欠な金属元素の中にクロムがあります。
クロムの基本的な性質
クロムは、クロム族元素と言われる金属の中の一つです。同じクロム族元素にはモリブデンやタングステンがあります。クロムは銀白色の金属で、硬いです。表面が酸化皮膜にすぐに覆われてしまうので非常にさびにくいという性質があります。クロムは、クロム鉄鉱と呼ばれる鉱石の中に多く含まれていますが、日本ではほとんど採取できません。
クロムの必要性
クロムは肝臓、腎臓、脾臓などの臓器の中にごく微量ながら含まれています。クロムが不足すると、インスリンが十分に働くことができません。インスリンが働かないと、血糖値の調整ができなくなりますから、糖尿病や動脈硬化などが発生し、人体に深刻な問題を引き起こします。従って、クロムは人間が健康に生きていくうえで非常に重要な成分だと言えます。
クロムが含まれている食物
クロムは当然体内で作り出すことができませんから、食物などによって外から体内に取り込む必要があります。一日の必要摂取量は30〜35マイクログラムと言われています。クロムは主に、レバー、エビ、未精製の穀類、豆類などに含まれています。しかし、食物の中に十分なクロムが含まれていないという問題提起もあり、現在はクロムを摂取するためのサプリメントも販売されているようです。
クロムの使用用途
金属としてのクロムは、光沢があること、硬いこと、耐食性がある(さびにくい)ことから、メッキとして使われます。黒色クロムメッキ(クロムでメッキした後に表面を黒く加工する)や、硬質クロムメッキ(とにかく硬くて表面を滑りやすくするメッキ)などがあります。他に、硬くてさびにくいという性質を利用して、鉄に合金として混ぜます。このクロムの含有率が10.5%以上のものをステンレスと言います。ステンレスは流し台や包丁にもよく使われているので、名前だけは知っているという人も多いかと思いますが、あれは鉄とクロムの合金です。ステンレスは扱いやすいため、非常に広い範囲で使われています。
六価クロムと三価クロム
クロム自体は、今まで述べてきたように、人体に必要不可欠な物質です。クロムが酸化すると、六価クロムと三価クロムという二つのクロムイオンが生成されます。他にも二価・四価クロムも存在します。
■六価クロム
クロム原子が6価化合物(6個の電子を失う形での酸化化合物)を生成すると、六価クロムとなります。三酸化クロム(化学式:CrO3)がこれにあたります。六価クロムは非常に毒性が強いです。六価クロムは水に溶けやすく、気化しやすいため、非常に体内に取り込まれやすく、皮膚につくと皮膚炎や腫瘍を引き起こし、また、発がん性もあると言われています。あまりにも危険性が高いため、現在では使用を禁止されていますが、昔は六価クロムが一般的に広く使われてきました。特に日本では、地盤を強化する目的でクロムを埋め立てることが奨励されていたので、六価クロムが埋まっているところは多く残っており、六価クロムによる土壌汚染や水質汚染が問題になっています。現在では、クロムを埋め立てに利用していた過去があることから、地盤の再工事をする場合には、六価クロム溶出試験をうけ、基準をクリアする必要があります。国としてもこの問題に真剣に取り組んでいるようです。
■三価クロム
クロム原子が3価化合物(3個の電子を失う形での酸化化合物)を生成すると、三価クロムとなります。自然界に存在しているクロムのほとんどはこの三価クロムです。化学的に極めて安定しており、水にも溶けないことから、毒性はほとんどないと言われています。従って、現在はこの三価クロムが広く使われています。先程説明したクロムメッキや、絵具の材料、研磨剤などにも使われています。
■二価クロム
クロム原子が2価化合物(2個の電子を失う形での酸化化合物)を生成すると、二価クロムとなりますが、二価クロムは化学的に不安定なので、一般的に使われることはほとんどありません。
■四価クロム
クロム原子が4価化合物(4個の電子を失う形での酸化化合物)を生成すると、四価クロムとなります。四価クロムは、強磁性(磁石にくっつく性質)を持っており、磁気テープなどに使われています。